九色麻豆|僕自身は知らない女の子と寝るのはそれほど好きではなかった。を処理する方法としては気楽だったしc女の子と抱きあったり体をさわりあったりしていること自体は楽しかった。僕が嫌なのは朝の別れ際だった。目がさめるととなりに知らない女の子がぐうぐう寝ていてc部屋中に酒の匂いがしてcベッドも照明もカーテンも何もかもがラブホテル特有のけばけばしいものでc僕の頭は二日酔いでぼんやりしている。やがて女の子が目を覚ましてcもそもそと下着を探しまわる。そしてストッキングをはきながら「ねえc昨夜ちゃんとアレつけてくれた私ばっちり危い日だったんだから」と言う。そして鏡に向って頭が痛いだの化粧がうまくのらないだのとぶつぶつ文句を言いながらc口紅を塗ったりまつ毛をつけたりする。そういうのが僕は嫌だった。だから本当は朝までいなければいいのだけれどc十二時の門限を気にしながら女の子を口説くわけにもいかないしそんなことは物理的に不可能であるcどうしても外泊許可をとってくりだすことになる。そうすると朝までそこにいなければならないということになりc自己嫌悪と幻滅を感じながら寮に戻ってくるというわけだ。日の光がひどく眩しくc口の中がざらざらしてc頭はなんだか他の誰かの頭みたいに感じられる。