枫カレン作品番号封面ipx-398|「上野駅」と言って緑は考えこんだ。「上野駅で思いだせるといえば私が二回家出したことね。小学校三年のときと五年のときでcどちらのときも上野から電車に乗って福島まで行ったの。レジからお金とって。何かで頭に来てc腹いせでやったのよ。福島に伯母の家があってc私その伯母のことわりに好きだったんでcそこに行ったのよ。そうするとお父さんが私を連れて帰るの。福島まで来て。二人で電車に乗ってお弁当を食べながら上野まで帰るのよ。そういうときねcお父さんはすごくポツポツとだけれどc私にいろんな話してくれるの。関東大震災のときの話だとかc戦争のときの話だとかc私が生まれた頃の話だとかcそういう普段あまりしたことないよう話ね。考えてみたら私とお父さんが二人きりでゆっくり話したのなんてそのときくらいだったわね。ねえc信じられるうちのお父さんc関東大震災のとき東京のどまん中にいて地震のあったことすら気がつかなかったのよ」